万葉集の1首
私に最も因縁の深い万葉集の1首は
同集第15巻国歌大観番号3648番の次の歌です
海原の沖辺に灯し漁る火は明かしてともせ
大和島見む 雪宅麻呂
これは遣新羅使の船が周防灘の佐婆津で遭難漂流し
下毛郡分間浦(わくまのうら)に漂着したとき
大和をしのんで詠んだ歌です
この歌は私の先師佐藤佐太郎が毛筆で書き
中津市の海側の賀茂神社の境内に石碑が建っています
因縁はまだまだ深くこの歌に同じく興味を抱いていた
中津の歌人久恒啓子氏と東京の短歌新聞社でお会いし
この歌の評論書を出版予定だと聞いたなど思い出の歌です
万葉に思ひを馳せて令和待つ(無季) 田辺風信子