いととんぼ川に暮れゆく寂しさに 鰻釣るチヨン掛緩めてはならぬ 音階のミを穢す蚊を疎みけり 蝸牛生くる時空の羨しきろ(ともしきろ) せはしなく対ひくる蚊を打ち落とす
2023年6月のブログ記事
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祭あはれ棕櫚のはかまを穿く男 祭あはれ酔ふて輪を外れゆく男 柄杓にて水のむ口説き村祭 捕へて呑む老婆はゐぬぞ青蛙 拍子をば少し外して青葉木菟 今日から30日まで久々に東京日野市の分室に出張でゆっくりします。ポール卿待機室みたいなものですが、コロナで卿に3年会えていません(^^)
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麦刈のノギのちくちく肌をさし 麦笛を吹けば昭和の音が鳴る 麦藁の節目節目の艶光る 葭簀して矢切の茶屋が時を超ゆ カーバイドの音が更けゆく夜振かな
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日雇の一日労ひ冷奴 自転車で鉦鳴らし来る氷菓売 深ければ梯子離れぬプールかな 田水ゆゑ泥の匂へるプールかな 溝浚へ先づは赤土掘りに行く
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青潮の浜の石とて拾ひ上ぐ 梅捥げばひつそりと立つ老木なり 捩花の形ととのひ巻き上る 幸運犬良君死んで夏空し 風鈴を部屋に吊して見るばかり
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切先で未来開くかシャツの白 シャツ白しおのれの今を光らせて 書士業を卒へたる初夏に愛狗逝く ご褒美に似る捻花を愛しけり 夏深む一つの過去も離りつつ
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新参の庭の友かなねぢり花 庭に出でて母の形見やねぢり花 保護すれば蕗茂りゆく狭き庭 光速で万年といふ夏銀河 外務省の芝にも見たりねぢり花
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我が好む冷ソーメンの素朴さよ 政治家の言「異次元」の涼し過ぎ 劣化して国はいづこへ心太 狗が死にし悲しみに咲くねぢり花 母くれし鉢の名残のねぢり花
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団子虫のむくろ運ぶや蟻の群 釣せねば船虫恋し家籠る 七島の干場に見しは道をしへ 車なき昭和が遠し老の夏 物干竿のアンテナ上げし夏空へ
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サイダーを飲んで口中昭和かな 順番はいいのか愛狗死んで夏 目に見ゆる青嶺といふも全て過去 LGBT英語ぼかしが蒸し暑し 梅雨の天心におもくのしかかり
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新茶飲み些事が嬉しき老人か 梅もいで今年のノルマ果たしけり 荘厳は死が造るもの空つ梅雨 イントロが天から下りて梅雨晴間 をりをりに湧く悲しみも梅雨の内
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梅雨晴も鬱は愛狗の死がいまだ 合歓の花我を誘へねむの国 花穂いでて少しの幸や野萱草 かく長く生くるも時世夏深む 更衣して探すかな良き事を
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蕾出し時に分け入る野萱草 朱(あけ)淡き蕾の清さ野萱草 天おもく閉ざしし梅雨の懺悔かな 新茶かな出涸らしも食ひ友おもふ 一息の沈黙梅雨の天垂るる
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狗のをらぬ手ぶらが空し梅雨の雨 六月や彼岸は心とぞ決めつ 梅雨の日は心の母と狗と睦む 狗に誓ひし懴悔が一つ芒種過ぐ 狗の初の月命日も過ぎて梅雨
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芒種過ぎ兄の田植の人任せ 七つしか灯のなき故郷蛍飛ぶ 火振などする子もなくて過疎の里 辛うじて庄屋元あり田植時 愛犬の毛はほぼ拾ひ梅雨の内
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230614詠 更衣(ころもがえ)さりとて客の来るはなし 毎日の閑古鳥よしさみだるる 山積の原稿のみの黴臭さ 栄光は過去にもあらず一生梅雨 愛犬を弔ふ日々に梅雨晴間
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宇宙にも孤独はありぬ寒昴 改作につき 神は上女将もつよし夏我が家 梅雨茸のひそかに庭にいでて雨 花咲けばわきて榊を愛づるかな 冷汁のソーメン美味し昭和味
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愛狗亡き両手の軽さ梅雨深し さみだれの音の寂しき居間未明 音低くさみだれは降り過去を呼ぶ 五月雨や先立つ者の羨しさ(ともしさ)に 犬のゐぬ居間の残像さみだるる
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帰省して飲む昼の酒狗を言はず なるべくは俳句談義の端居酒 夏屋敷風の通はずなりし居間 あと何年兄と飲む酒梅雨の昼 兄と飲む昼酒美味し端居して
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さみだれに行かまく欲るや濁り釣 母死んで愛狗が死んで梅雨深し わがための木となりし木の榊咲く さみだれや両子由来の木に草に 草茂る狗の死にゆきしその後も 今日は愛犬の最初の月命日です一か月経ちました(やっと耐えた感じ)
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バス停のトタン屋根よりさみだるる さみだれやバス賃十円母が出す バス停小さく何人か外さみだるる さみだれの低周音やバスを待つ 雨降るや鰻の遡上待つわれに
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梅雨といふ妄想時間老たのし さみだれや君が代かつて斉唱し さみだれや村の小学講堂も 古ピアノ小学講堂外は梅雨 水草とともに水入るプールかな
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譬ふれば湿漉漉(しつろくろく)の梅雨に住む 関はりも失せて報聞く山開き 映像の男池の清水過去遠し 愛即ち別離の苦かな遠青嶺 老幹撫でて梅の豊作褒めにけり
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歴史かな皿に自負する桜餅 俳友N氏のアドバイスを思い出し改作 狗の去りし空虚が無辺梅雨深む 彼岸とは心の中だ梅雨の解 ぺツトとふ呼び名の軽さ黴の家 狭けれど庭に苔むす土がある
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五月闇真の友情ふと思ふ おもむろに老は孤立に青蛙 侵蝕は四方より来る黴の家 老といふ黴を蔵する五体かな 愛狗逝き老が一気に黴と化す
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短夜や人生も店じまひ中 メデイア死に静寂過ぐる夏の鬱 梅の実を見るのみの日々時余る 若さこそ美味さとおもふ新茶かな 目に入るは全て句になる草茂る
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篠の子のいづる頃かな故郷も 大方は知る人逝きて里の夏 里の夏ふかむ山野はありのまま 左耳に田蛙の声棲む夜かな 狗の死にて両の手余る夏夜かな
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大船の青い山体涙もつ 雨晴れて大船山のふかみどり 五月十日舌の紫忘れ得ず これほどに愛別離苦か新緑に 梅実る愛別離苦の空しさに